POEM 9

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雪吊り 野茨の白い花
The prayer マー坊 私の天使
乾 杯 鵜戸の階 回遊魚
微笑携行 多様なら 痛いっ!
霧の向こう 猫を誘ってお花見に 詩をなぞるバグ
鏡の他人 寛容動物 寝返り
何を見てるの 消えた雨音 塵 埃
人は臨終に請うという 哀しい檻 海 鳥
美しい光陰 出 た 龍神只渡雷雲
花びらはしきりに空に 卑怯な私 素晴らしき日々

雪吊り
yukitsuri

些細な傷が 小枝に積もる
小枝は折れて ぶら下がる
そうして 大きな枝さえも
次第に痛みに耐えかねる

誰かある 今すぐに
あの美しき吊り技で支えてよ


野茨の白い花
noibara no shiroi hana

藪の間に楚々として
薄い五弁が揺れている
今年の葉は生命に充ち
遥か下流の早苗に呼応して
けだるい午後を突き刺すようだ
こころさみしい年は
生まれた故郷に
めぐり合うかの
懐かしさでもある



uguisu

あの笹鳴きをしていた チャッチャが
法華経は上手く唱えられなくても
それなりに唄い出すと
拍手をしたくなるよ
パパタンと繰り返す たどたどしい娘の
初鳴きを おもいだす
ぱぱちゃんは老いてしまいましたが
やがて
娘は谷を渡る頃です


The prayer
inori

渋滞の国道を
腰掛けて見ている
これほどの人たちが
何処へ行き 帰るのだろう
気にかかるのは
向かいの角の眼鏡屋の
今年はやりのサングラス
あせっても 仕方が無い
ひたすらあるだけ受け入れて
今日はここらで終います


マー坊
mahbho

誰が呼び始めたのか
物こころついたら そう呼ばれていた
気分によって マサになり マーになりはしたが
たいていは そうだった

いつのまにか
そのように呼んだ人は 殆んど彼岸に住んでいる
恥ずかしいけど
幼い名前を 抱きしめて
成長もせず
坊主頭の 素足のままに
私はマー坊で暮らしてる


私の天使
watashino tenshi

そこにいて 呼ぶまでは そこでいい
涙をどれだけ 尋ねられても
私に答える余裕はないからね
影のよに 張り付いた 私の天使は
私を蹴って追い立てる
きれいを変則しなくても
良かったよ 今日のキス
思いやりを 投げ合って
疲れるような 恋はいらない
身は淵に 円周に立ちながら
ほら全然恐くないもの
噛んでよ 傷をつけてよ
ひとりになって 痕跡の無い
そんな昨日がよっぽど辛いもの


乾 杯
toast

So that my feelings break for the sadness.
It passed many small stations.
It was returning but delightful every day.
I might be able to meet you.
In drinking, beautiful every day.

途中下車前途無効のチケットを
列車の窓から 投げ捨てて
ここから先は 雲に乗り換え
知らない駅を一度に見よう
さて よき日々へ ビールを開けて


鵜戸の階段
udo no kizahashi

穏やかに太洋がのたる
紅の橋は岩屋に沈む
ああ こんなに心が慰められたのは
いつ以来

緑は限りないグラデーションを競うばかり

ちっとも 敬虔でない神の子の私は
パチパチが やたらに好きで
鳥居があれば 覗きたがる
山門は 潜りたい
あまりに沢山参るので
ご利益などはありますまい

そうして こうして 旅をした
ああして どうして 明日も旅


回遊魚
kaiyugyo

獣の道も 似たようなもので
好きなルートがあるよね
左回り 縦断 登攀
無理しなくてもいいのに
どうしても そんなふうに 廻りたいよう
放たれた 小魚は いっぱい遊んで 危険して
ようやく大きくなったのに
帰って行きたい とこがあるみたい
理解出来ない 何処かの脳が
指示して 支持して 私事をする
荒れる天気もなんのその
他所の見え方 知るもんか
そんなんだから
生まれて落ちたその日から
期限の切られた回遊魚みたいなものです


微笑携行
bisho keikho

まだ夜も開けぬ 小寒い頃に
昨夜に向かって手を振って
何度も何度も振り返り
独りっきりを 確かめて
ドアの軋みを懐かしみ
ノブを押さえて ひっそりと
それでも笑顔は忘れずに
鞄に詰めてお出かけします


多様なら
tayho nara

幼い頃の秋の鰯雲
少年の夏の積乱雲
天文気象も頭のポッケに
ごちゃ混ぜて
取り出す先から 溢して無くす
出会いも定めの根っこの方で
上手くいかなきゃ
さようなら


痛いっ!
itai !

小さな小さな手の幅で
私を超える歴史の人を
抱きしめたなら 痛いよ
何ぼか大きな掌で
幼い魂を撫でたときも また痛い
等分等量で育ったもので
ひずみや ゆがみに すぐ手を挟む
あっち あっちと わめく人
お家おうちと 嘆く者
平均的でも 落ちこぼれても
居たい 居たいと
聞こえる耳が
心をいつも 宥めてる


霧の向こう
kiri no mukho

ここまで築いた関係は
壊れる為に 存在したのじやない
大きな橋の新築工事
必要だとか 要らないだとか
問題以前の話しだね
誰かの為に仕組みが動くの
飽き飽きしたし 興味もない
引き寄せたいから 巻き戻す
だって きっと 恐れてる
何にも見えない白い闇
恋人たちが 確認しあう
私は あなたの価値ですか?
変わらぬ事を信じたい
晴れ日の 雲は鐘のシルエット
変わらなければ 明日がない
生きるか死ぬかは たいていが
そんなところの補色に見える


           猫を誘ってお花見に
                   neko o sasotte ohanamini


ごろごろごろと トタンの屋根で
怠けていては 身体に悪い
骨付きチキンも持っているから
一緒に花見に行きましょう
鼠が淵に 鰹崎
あなたに場所は任せるからさ
まだ夜桜は寒いので
日のあるうちに出かけるよ
あなたも私も記憶の中に
家族で一緒のことがない


詩をなぞるバグ
shi o nazoru bagu

生まれたことを悔やんだら
父と母とがあまりに可哀相
泣いたりしたら 小突かれて
男はしっかりするものと
怒鳴られどおしのバグでした
合わせて生きて終るのならば
たいそう疲れる虫だから
文字をなぞって息継ぎながら
きれいな ものを 喜んで
そのまま褥に持ち込んで
老眼鏡に写します


鏡の他人
kakgami no tanin

並行異次元をとぼとぼと
私のような者が歩く
やること全てが同じでも
心が左右に反転してる
世を拗ねて 愚痴をいうから
口角が曲がってしまっている
ため息からは いつまでも
毒を吐き続けている


寛容動物
kanyou doubutsu

許す事を覚えて
はたして生き物は
強くなれるのだろうか
優しさは自身を壊すマテリアル
棚に置かれて枯らされる
観葉にだって
水は決して意地悪ではない筈なのに
時として 根を冒す
ただ それでも それだから
八方に 当り散らして
済むことではないのだけれど


寝返り
negaeri

悪夢 やなこった 色違い 筋外し
起きても疲れが 取れないです
買ったばかりの ピアスが緩い
塗りたての マニュキアも 止したわよ
少女は イライラ 斜めの
Sun−day  Some−day
あなたの為よ 未来の布石
止して やめて 嘘つき メ!
大人の気持ちの居場所でしょ
そいつを 笑えば ほら また怒る
お願いします ほっといて
できるだけ 本音は言わずに
いい子にしてるから


何を見てるの
nani o miteruno

本当はいつも
決まった朝の日課だったのに違いない
オフィスの前を掃き
鉢に水をやり 窓を拭く ような

ある日あの朝
泣きそうな君を見た

それは君が岐路に立った時だったのだね
こうではなかった 何故?と
その痛ましいほどの景色は ここから 去らないのに
君は発ったのだ

よしよし と 撫でている
人がここにいる
君は知らずに 見られていたのだ
しかも 私に
徒労であったか 為なのか
それは君が知るだけ

嘆くなよ 怒るなよ
誰かが きっと 見ている
それは 偶然と言う価値に拠る
素敵かも しれないけれど


消えた雨音
kieta amaoto

浅い眠りにしばらく忍び込んだ雨は
音を流して去った
庇や 小枝 電線のみが
名残の曲を弾いている
おだやかな夜明けのために
二幕目を譲って
彼は遥か 天上を目指す
思えば 長い旅だろうに
別れも告げず 背中を向けて 泣いただけ


塵 埃
jin ai

シリコンウェハーの無埃室のような隔絶は
なおさらに 変質して 渇望となる
人は愛に 生きなければ ならないというのに
子供たちから 奪い 目を塞いだその罪は 深い
なべて存在は許されるのでなく 義務だから
たとえば  ほかが どれほどおぞましくとも
共にあらなければならない
埃を 誇りに昇華してこその 人ではないのかな


人は臨終に請うという
hitowa rinjyuni kou to yu
   
なんでだろう
なぜ 今 君が逝くのだろう
萌えだした ばかりの春なのに
いくらも明日があることだろう
悔やみは 残世の人のものとして

人は死に際に請うという
私は あなたに 幸せでしたか
そればかりを 問うという
私はどうでもいいのです
あなたに
私が
幸せでしたか
ほんとうに 残りはありませんか


哀しい檻
kanashii ori

善意ではなく まして悪意でなく
人は檻に住みながら 独り芝居を続けてる
与えられる 豪華な食事を残しながら
自由でいると 思ってる
巧みに用意されたその檻が
見えている者は少ない


海 鳥
umidori

山を越えて 小さな港の村
貝を拾い 夕べは旭湯に
なつかしい潮の匂いなのに
見知った顔は殆んどいない
手篭を腰に括りつけた
祖母が歩いて来るようだ
家並みは立派になって
今 素晴らしい道路が出来ている
ただ
鳴き交わす
鳥には縁のない話し


美しい光陰
utsukushii kouin

生きていくということは
なんという コントラストなのだろう
張り裂ける悲しみと
押さえきれない喜びとが綾なす芸術
紅顔は老い易き さだめと知れば
たっぷりと浴びた陽光を影に捧げ
今は
幾多の朝夕たちに手向けるだけ
罪を問うなら いざ罰を
私に直に呉れたまえ
もしも謝恩を言うなら
思い出少ない姉に与えてよ


出 た
deta


まただよ 案の定
方言のイントネーションに 転がしたいひびき
あるよね
やっぱ とか 仕方ないとか ご覧なさい の約束語
お化けが出るより 普通
でたぁって 驚かぬ 安心する生物界隈に
羊歯みたく
根付いての
それ
データのことを
笑うには
そのシンプルが不可欠の
出た


龍神只渡雷雲
ryujin kumo o wataru nomi

乾いた丸い植木鉢は
まさに 枯れようとしている
 治を統べるものは驕り過てるのに
未だ 青き龍は目覚めず

遠い雷光は行方も知れず
弱く愚かなる小人は
行脚果てしなく 雨を乞う


花びらはしきりに空に
hanabira wa shikirini sorani

楠の大樹の芝広場に
正時の休息を求め
スーパーの惣菜を並べる
旬のおかずといえば
満開の花弁たちを 誘う風だけ
時代は豊かに実ったのか と
光景風景は 後悔をしきりに促す
地に葬られし者から
悲しみの縁者が去れば
天空に 薄桃色の
花弁が 逆さに 降りしきる


卑怯な私
hikyo na watashi

いつも自分の幸せばかり願ってる
煙草も酒も止められない
小心・臆病なので
胸いっぱいに空気を入れて
大きく見せていたりする
都合にあわせて話したり
ツキのないのをネクタイや
靴下の色に押し付ける
寝るとき 飲むとき 食べるとき
胸がチクリと痛みます


素晴らしき日々
subarashiki hibi

八方に美しき自然があり
どこへ行こうと 自らの旅の跡に溢れる
生まれ落ちてよりこのかた
幾多の出会いに愛されつづけて来たのだね

砂丘の夕陽 滝のしずく 野道の花
壮大も 微小もその時は
ただ私の為に
しっかりと存在していてこのうえの不足はない
ただ 素晴らしき日々を
悲しみを含まずに
想い出として語りたいだけ

舌がしびれ言葉を失い
指は上がらず 雲も指せぬ時が来ようとも
生きた事実は間違いも無く残るから
それだけでいいのでは ありませんか


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